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恵方巻き伝説・過去編

 リュークは「カナメの書」を手にとった。

いつもの如く、キッチェにちょっかいを出したアレックスが円舞・後輪却でノックアウトされたため、その懐から落ちたモノだった。

 「ったく、世話の焼けるヤツだな~」
すぐに返すつもりだったが、ふと、ある日付が目にとまった!

 「2月3日……?今日だ」

 日記風に細かい文字で、過去の出来事を綴っている。
書き記した人物はカナメ。

 他にもリュークには、理解できない難しい外国語(ドイツ語?)や、良くわからない計算式……潮位や月の満ち欠けデータによる洪水確立……と思うモノが記されていたが、良く分からないのでスルーした。

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 2月3日

 ― ―今日はミノルが、子供達に「恵方巻き」なるモノを作って食べさせたいと言うので
食材を調達にいった。オレが食材を持ち帰ると― ―

 

 「く……黒トリュフ~~っ!?ソレ…巻くの?」ミノルが驚きの声をあげる。
 「カナメ……さん?」
 マリアちゃんの『まさか、盗んだんじゃないよね?』的な冷たい視線がオレを射抜く!

 「う゛う゛っ!な…何だよ?2人共!その文句ありそうな顔はっ!?具は、このトリュフ&イクラとミノル特製の厚焼きタマゴだっ!いけそうだろ~~?…あ、言っとくけど盗んだんじゃないぜ?」

 ミノルが目を丸くしてたずねる。
 「え?もしかしてカナメのポケットマネーで買ったの?」
 「バカ言え!欲しいモノは、買うんじゃなくて見つけるんだよ!オレの鼻は裏山のトリュフの匂いをかぎわけた!」

 「……ブタか!」

マリアちゃんの、人を人とも思わぬ厳しいツッコミが入る!

 「で、そっちのイクラも大海原で見つけて手に入れたの?」
ミノルがチラリと見て、もう一方の食材イクラを指差した。

 「ああ、こっちはアトランティスの艦長から頂いた!ザジ嬢におねだりしたら、追い返されそうになったんで、慌てて艦長に『買います!そのイクラ、いくら?』って聞いたら、大爆笑してタダで持ってけーって!」

 「艦長……ダジャレ好きなのか」
 「てか、カナメさん買おうとしたの?欲しいものは買うんじゃなくて見つけるんでしょう?」

 「はははは!ちっちぇ~事は気にしない!せん無き事よ!せん無きことよ!」

 「はぁ~……ったく!」
 ミノルは溜息をつくと、マリアちゃんと顔を見合わせ小さく笑った。

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 ― ―それから、ミノルが少し甘めの厚焼き卵をつくり、マリアちゃんやみんなで、くるくるっと巻いて、子供達と一緒に食べた!
 みんな、大喜びで、マジ、美味かったな。
 今年も、福が来ますよーに!そして来年も再来年もこんなふうに皆で迎えられますように。

 祈りを込めて― ―  2月3日・節分

 

  …… 遠くからリュークを呼ぶ声が聞こえる!
 「リューク~!太巻き完成しましたよ~!」
 「今年もおっきいの食べるんでしょ~?欲張り~!」
 マリアとキッチェの声だ!今年も恵方巻き大会が始まる!

  パタン。
 リュークはカナメの書を閉じた!
 
 

 「ああ!今行く~~!!」
 倒れたアレックスをその場に残し、電車の家に向かって駈け出す薄情なリューク!

 サンクルスでも美味しい太巻きが待っている!
 日記の中の皆のように、わいわい楽しく……。今年も、来年も、再来年も、きっと変わらぬ団らんがやって来る!

 ただ、残念ながら、アレックスに団らんはやって来ないだろう。たぶん……!
             

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